すらんばーの、のうみそ

劇団すらんばーの中の人のひとりごとです。

「掬イ救ワレ透キ好カレ」

企画公演「煌、燦、星」

「掬イ救ワレ透キ好カレ」

 

フライヤーや当時のあらすじはHPをぜひ。

PAST PERFORMANCES | gekidan-slumber

 

ふくしまうい2回目の外部公演です。

 

この時は、高校時代の友人と2本立てで打ちました。

二人で劇を観に行って、帰りに食べた中野のラーメン屋で、

二人で公演を打とうよ、とその場で役者を集めて企画を立てました。

 

2本立てにするなら、お互い同じテーマがあった方がいいねと

宮沢賢治著「よだかの星」をテーマに選びました。

 

彼女の方は、1人劇で「あの子」

私の方は、6人劇で「掬イ救ワレ透キ好カレ」という作品になりました。

 

なんとなく、連続殺人犯の話が書いてみたくて、

あと援助交際をしている女の子の裏側みたいなものが書いてみたくて、

よだかの星のストーリーというよりは、よだかの心情に寄せて書きました。

 

それと一緒に、高校生の時に考えていた、

「夏祭りの金魚すくいで掬われなかった金魚ってどうなるんだろう?」

という話が根底にあって。

「掬われなかったら、救われないなあ」なんて言葉遊びから考えた話でしたが、

夏の尊さとか、祭りの懐かしさとか、命の儚さとか。

なんか全部が綺麗に収まった話だったかなあと思います。

 

自分自身めちゃくちゃ仲がいい兄がいまして、

二人だけで3〜5時間喋り続けるとかがザラなんですけど。

中学時代とか私口を開けば兄の話をしていたらしく、ブラコンとからかわれたほど。

 

小さい頃から母にとって兄は特別だったんだろうなという気持ちがあって。

(もちろん贔屓とか差別があったわけでも、

 母からの愛が私に向いていないなんて感じたことはありませんが)

母と兄の中には、妹は入り込めない世界というか、空気感みたいなものがあると思うんです。

そして私は、幼少期から親といる時間より兄といる時間の方が圧倒的に長かったので、

私の中ではどちらかというと兄の存在が大きくて。

この二人の間にある絆みたいなものには勝てないんだなあみたいな

寂しさが無意識のうちにあったんだろうなと思います。

 

それと、親からの愛とか言葉とか期待って、

ある種の洗脳や呪いに近いよなあという思いがあって、

兄は特にそういう思いが強かったんじゃないかなと勝手に妄想して解釈して、

労いじゃないけど、

一人間ではなく、「兄」でい続けてくれた彼の人生の要素が作品になればいいなと思って。

 

そう言った気持ちを全部出し切って、書ききった作品です。

これ兄に読まれたらめちゃくちゃ恥ずかしいですね。読まないでくれ(念)

 

ちなみに兄は全く演劇なんかには触れずに生きてきた男で、

私の劇を初めてみにきてくれたのがこの話でした。

演劇とか興味ないからな〜なんて期待薄で渋々みにきてくれましたが、

この劇中にちゃんと泣いてて、私は音響を流しながら一人で大笑いしておりました。

めっちゃ泣くやん。「うるっ…」とかじゃない。「ぼろぼろ」。大号泣。

 

そっから兄は私のファンとなってくれまして、

旗揚げ公演では音響をやってくれたり、ほとんどの公演でバラシを手伝ってくれたり、

なぜか打ち上げにだけ参加したりする存在になりました。謎ですね。

 

そして、今回の優役は、めちゃくちゃしんどかっただろうと思います。

舞台の構造上全員出ずっぱりではあるんですけど、心境的にというか。

母親を殺しちゃって、たった一人の家族である妹の前では「兄」でいなければいけなくて、

援助交際の裏側を除けば、苦しむ子達ばかりで、「救ってあげなきゃ」って、

救って欲しかったのは、誰よりも自分だっただろうに。

死ぬことが救いなのかなんて、結局わからないのに。

100%やりきって、出し切って、優になってくれた彼には本当に感謝しています。

 

個人的には、自分が妹なので、夢役に感情移入してしまいまして。

誰よりも大好きな兄が苦しんでいるのは知っていて、

誰よりも近くにいて支えられるのは自分だってわかっているのに、

自分では救えないんですよね。兄を殺すことは絶対にできないし、寄り添うこともできない。

自分は「守られる」側だからです。

夢にできるのは、兄を肯定して、必死につなぎとめることだけなんですよね。

でもそれ自体も、優にとっては重荷の可能性もあるんですよね。

自分が妹だから優は生きててくれるけど、彼女が妹だから優は死ねないんです。

兄に寄り添えるのは、兄を苦しめている、援交少女たちというジレンマ。

 

彼女たちにある母性と、儚さと、危うさは、きっと母に近いものがあるんでしょうね。

 

「苦しかったよね、辛かった、悲しかったよね、大丈夫、もう大丈夫だからね」

 

優が一番言って欲しかったんだろうなあ。

 

重い話はここら辺にして…

援交少女たちを演じてくれた女の子たちは、

全員高校時代の演劇部の後輩だったのですが、

役とは正反対くらい明るくて素直で騒がしい子達で。笑

稽古場は、徐々に幼稚園みたいになってました。

「〇〇ちゃん!スカートなんだからそんなに足開かないの!」みたいな。

 

そしてこれはこの作品の話する時絶対にする話なんですが、

優が来ているワイシャツを女の子たちで脱がすシーンがあって。

ただ、その日着てたワイシャツが、すごい硬いシャツだったんですよ。

シャツ自体の生地も厚くて、ボタン穴が少しきつくて、

でも女の子は片手で外さなきゃいけないから、結構必死なんですけど。

あまりにも外れなさすぎて一人の女の子が結構低めのガチトーンで

「カッッテェ…」って呟いてしまった伝説があります。結構笑いました。

 

2本立て公演だったので、40分くらいしかない劇なんですけど、

私の中では一番好きで、大切なお話でした。

 

これは絶対再演しようと思ってるんですが、

援交している女子高生役をやってくれる女の子がたくさん集まるだろうか、という不安。笑

でも大好きなので、再演したいな〜〜〜。

 

こちらの台本も、次回公演の際の物販で販売しているので、是非。おすすめです。短いし。

 

きっと来年の夏、また語るような気がしますが、今回はこの辺で。

 

おやすみなさい。