すらんばーの、のうみそ

劇団すらんばーの中の人のひとりごとです。

「色相環」

劇団すらんばー第六回公演

色相環

 

フライヤーや当時のあらすじはHPをぜひ。

PAST PERFORMANCES | gekidan-slumber

 

 

この作品は、個人的にめちゃくちゃ大好きなんです。

思い入れが深いとか、感傷的になってしまう、とかではなく、

お話、公演全体の空気感、全て含めてとても気に入った公演でした。

 

第六回、っていうのもいいですよね。

六って数字がどうこうとかではないんですが、

このお話は、なんか「第六回」でやるべきだ、って感じがします。

ものすごく個人的な感想です。

 

シェアハウスの話は、第三回公演の時から

ほんのりやってみたいなあとは思っていたんですが

なんとなくうまくまとめられず、放置されていた題材でした。

 

それがふっと「絵描き専用のシェアハウス」というひらめきで

一気にぐぐぐっと作品にまとまりました。

 

同じ目的があるからこそのまとまりみたいなものが、

お芝居にしやすかったのかなあと思います。

 

今回はこの話のお気に入りポイントを語っていきたいなあと思いますが。

 

まずなんといってもキャラクターが好きです。

今までの作品も、もちろんみんな個性豊かでしたが、

ここまで1人1人のキャラクター性がまとまってて、

綺麗に完全に全員がハマったことあっただろうか!?と

感心してしまうくらい、役者さん含め「完成」してた気がします。

 

まず真白。

「この役ショートヘアのイメージだけど、切ってなんて言えないしなあ。

 まあ長かったら長かったで、一つ結びとかでもいいなあ」なんて考えている時に、

役者さんから「このくらい短く切りたいんですけどいいですか?」とLINEをもらって、

その写真が、完全にイメージしてたキャラクターデザインどんビシャで、震えました。

奇跡でした。これは書くしかない。

 

自分の目的があって、誰にも縛られず、自分のためだけに絵を描いている。

その分、誰にも寄りかかれず、きっと一番弱い人。

儚くて、ずっと一緒にいなくちゃ、いつかいなくなっちゃいそうで、怖い人。

綺麗で、かっこよくて、ずっと見ていたくなる人。独り占めしたくなる、そんな人。

それがもう役者さんにぴったりで…本当に見れてよかった。やれてよかった。

 

次に、水月

いつもなんか少しおちゃらけた役が多いような子だったので、

正反対の、ザ・ヒロインみたいな役やって欲しいなと思って書いたキャラクターでした。

水月役の役者さんの声と台詞の読み方が私はとっても好きでして。

たくさん聞けてものすごく嬉しかったです。

 

水月は、多分、言ってしまえばものすごく一般的で、平凡な女の子だと思います。

絵描くのは好きだけど、仕事にするのは難しいよなあ。

なんてふわふわ考えてたらやりたいことも見つからなくて、仕事も決まらなくて。

一旦いろいろ学ぶためにも、家から出て、頑張ってみようかなあ。みたいな、

物事をあまり重く捉えられない子。

それでいいと思うんです。こういう子の方が、世渡り上手だったりするんですよね。

 

この話1番人気と言っても過言ではない、赤石。

多分水月と同じくらい、普通な、男子。という感じ。

普通に生活をして、普通に恋をして、普通にドキドキしちゃったりして。

ただそこに一つ、絵の才能が彼にはあった。

そして、それを「褒められたいからやってる」って言い切れる性格は、

簡単に手に入れられるものではないと思うので、ものすごく尊敬します。

物事を続ける時って、大層な理由探したりしてしまいがちだけど、

それだけでいいじゃん。って言えるって、本当に大切だと思います。

ただ、恋に関してはとっても不器用で、それを補うために、

パワーとかパッションでどうにかしようとする素直さが愛おしくなります。

お前はずっとかっこよかったぞ。胸張れ。

 

桃子。女ッ!って感じ。もう…女ッ!凝縮!みたいな。

絵に関しては、ちゃんと自分で自分の作品を

マネジメントできるタイプなんだろうと思います。

個展開いて、ポストカードとかちょっと作って売っちゃったり、たまに絵も売れちゃったり。

仕事はきっとすごくできるタイプなんですが、プライベートの時が鬼。

真白がこの家に来た時からずっと真白のこと見てたんだろうなあ。

そして、私は真白のことわかってあげられる、って思ってる。

真白の邪魔しない、いい子の私でいることが、真白にとって一番いい選択だって信じてる。

自分が真白を支えてあげようなんて驕らない。

だからこそ、真白の心にズカズカ入っていく水月が気に入らない。

自分にはできなかったことだから。

その選択はきっと、間違いじゃなかったと思うよ。桃子。ハーゲンダッツ食べて元気出して。

 

緑は、本当に、「管理人」って言葉が一番よく似合う。

建物とか事務的な管理人としてもそうだし、

メンバーのことをよく見て、よく考えて、管理ができる。

事件や事故にならないように、話をしたり、たまに叱ったりすることができる人。

こういう人って本当に大切だと思います。

絵を、趣味だってちゃんと言えて、本気にならないようにいられるって、

簡単なことじゃないよなあって思います。

歳が近いメンバーとは、ちょっと人間味溢れるところも、魅力的なんですよね。

恋バナですこしにやにやしちゃったりとか。かわいい。

「春はね、一度きりだから青いのよ」って、いい台詞ですよね。緑さん、さすがです。

 

問題児、藍染

どうしてもこの役者さんにスケベな役がやらせたかったっていうのもあるんですけど。

結構芸術をやっている人においての「あるある」というか。

エロティズムと芸術って紙一重だったりして、

絵でも、演劇でも、映像でも、

芸術だったらなんでもありなの?みたいな作品って結構あると思ってるんです。

でもそういう作品って、「芸術」を愛している人からは評価されたり、持ち上げられたり、

その作品を作っている人がその界隈を牛耳っていたり、上の立場にいたりする。

でもそれって、エロティズムが評価されているのか。その作品が評価されているのか。

私が創る作品は、そういったことに踏み込まないから評価されないのか、とか。

エロティズムが悪いわけではないけど、少しもやついてしまったりする。

そういう、芸術家の強い立場みたいなものを藍染に凝縮したくて書きました。

本当にキャラクターデザインがめちゃくちゃ好きで、

初稽古の時役者さんの髪が伸びてて、感動しました。解釈一致!

 

最後に伊墨。芸術家”らしい”、芸術家、というか。かっこいいですよね…。

命を燃やしてこそ、素晴らしいものが作れる。

素晴らしいものを作るには、命くらい燃やさないと出来ないはずだ、っていう

古典的といえば古典的ですが、きっとそれが真髄なんだろうなとも思ったり。

「命懸かってっから、芸術ってのは美しいんだよ」

伊墨役をやってくれた役者さんのあの声と圧、空気、全部がぴったりで、伊墨でした。

あと、夜しか活動できないっていうのも、伊墨らしくて好きです。

アレルギーなのか、体質なのか…日光が苦手だという伊墨の、人間じゃない感。笑

彼女の自己紹介、「”今は”伊墨って名前」ってことは、

きっとどこかの浮世絵師の如く、よく名前が変わるんだろうなあ…。

 

キャラクターの語りがだいぶ長くなってしまいましたが、

この話の終わり方が好きだという話だけさせてください。

 

さんざん強がって、大人ぶって、かっこつけてきた真白が、

「デートしよ」なんて、子供みたいなセリフを吐いて、外へ連れ出す。

なんか光ってる!って冒険家気分で、でも結局はただの自販機の灯りで。

道端の花を見て可愛いねって言い合って、水月の頭に花をつける。

おままごとみたいな結婚式ごっこをして、

離れたくないって気持ちがこれ以上育たない様に、鬼ごっこを始める。

そこで吐露する、心の中だけの、二人の愛。

 

きっと、彼女たち以外の全てにとって、

あの選択が正解だったんだと思います。

 

彼女たちはきっと、毎日のいろんな場面で、

お互いのことを思い出して、苦しくなって、切なくなって、辛くなって、

愛おしくなって、また前を向いて歩いて行くんでしょう。

 

桃子はすごく落ち込むと思う。

察して、赤石はアイスとか買ってくると思う。

藍染ですら、なんかちょっと慰めてくれると思う。

緑と伊墨で、たこ焼きパーティーとかやってくれると思う。

 

二人がいなくても、そうやって少しずつ、夢工房は元の姿に戻って行く。

誰かがまた抜けて、新しい誰かが来て、そうやって巡って行く。

 

たくさんあったであろう歴史の、たった一瞬の、夏。

 

そんな切なさがあるこの物語が、私はとってもとっても好きでした。

全員に幸あれー!

 

公演の際の物販や、オンラインショップなどでも台本を販売しておりますので、

このお話が気になった方は、是非。

 

また青い花を見かけたら思い出していろいろ語るとは思いますが、

今日はこの辺で。

 

おやすみなさい。